マリアの系図【感想】ルカの福音書(15)イエスのバプテスマとイエスの系図3:21~38

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ここまでの文脈

 イエスの公生涯は、バプテスマのヨハネの登場から始まった。

 ヨハネは、「荒野で叫ぶ者の声」として人々の心を整える働きをしていた。そこに、イエスが登場し、ヨハネからバプテスマを受ける。

 そして、次にイエス系図が紹介される。

今回の聖書箇所を要約すると

感想・気づき

 バットコル(父なる神の声が直接人々に聞こえる現象)で、父なる神はイエスについて、「あなたはわたしの愛する子。わたしはあなたを喜ぶ(ルカ3:22)」と言う。これは、前半は詩篇2:7、後半はイザヤ書42:1の引用になっている。これらの箇所は、捕囚からの帰還後の中間時代において、メシア預言であるとユダヤ教は考えてきた。それぞれ、前半がメシアが神の子であることを、後半がメシアが主のしもべであることを示している。この言葉を通じてイエスはメシアとしての自己認識を与えられた。

 また、これはクリスチャンの自己認識でもある。イエスを信じるものは父なる神の前にイエスと同等の神の子とみなされ、同時にキリストのしもべとなるのだ。

 この詩篇イザヤ書の引用は、それぞれ一部分だけを引いているが、旧約聖書の知識のある人にとっては、これを聞いた瞬間に前後の文脈も含めてすぐに意味がわかるのだろう。まだ、そこまで旧約聖書の知識がないのでその辺りは味わえていないが、徐々に知識を蓄えて、こういった引用箇所を深く味わえるようになりたいものだ。

 

 ルカ3:23〜38はイエス系図が続く。当時、系図の重要性には様々な意味があった。一つは身元証明で、当時は全てのイスラエルの部族は系図を持っていたので、これをもって自らのユダヤ性を証明することができた。現代のイスラエルにあっては、系図はすでに失われているので、ほとんどの場合は、その人が元々住んでいた地域のラビの推薦状によってそのユダヤ性を証明しているようだ。

 また、系図は土地の所有権の証明にもなっていた。土地は部族、氏族、家族に応じて分割されていたからだ。

 また、祭司職と王位の証明にも必要だった。アロンの家系が祭司であるための条件だったし、イスラエルの王はイスラエル人(申名記17:15)である必要があり、ダビデ以降はダビデの家系(第2サムエル7:16)である必要があったからだ。

 この王位について言えば、イエスが生まれた当時にいたヘロデ大王エドム人だったので、イスラエルの王としても正当性はなかった。だから、マタイ2:3で動揺し、イエスを殺そうとすぐに考えたのだ。

 さらに、系図はメシア性の証明にも必要だ。メシアはアブラハムの子孫、ダビデの子孫から生まれるとされているからだ。

 

 ルカの福音書に登場する系図は、イエスの母マリアの系図である。よくマタイの福音書冒頭の系図と今回のルカの系図が食い違っていておかしいという話があるが、これはヨセフの系図かマリアの系図かの違いであり、何ら矛盾ではない。

 ルカ3:23で「ヨセフはエリの子」という書かれているが、原文は英語で書くと「son of Joseph」となっており son の前に定冠詞「the」がない。これ以降の系図の中には「the (son) of Eli」と定冠詞の「the」が付けられている(「son」という語は省略されている)。専門家の説明では、定冠詞「the」の付いていない場合は、その人は系図から外れていることを示す。つまり、エリはヨセフの実父ではなく、義理の父であり、すなわち、マリアの実父であることを示している。

 ルカの系図から、イエスは、肉体的にはマリアの子であり、肉体的にはアブラハムの子孫、ダビデの子孫である。そして、ルカの系図ではイエスからアダムまで遡ることによって、イエスが全人類の救い主であることを示そうとしている。

 最初のアダムは不従順の罪により原罪を全人類の中に負わせたが、最後のアダムであるイエスは神に従順なアダムであり、この最後のアダム・キリストにつながることで人類は救いを得ることができる。

 系図の重要性には驚くべきものがある。何も知らずに読んでいると、ただ退屈なだけで読み飛ばしてしまうところだが、聖書の知識が付けばつくほど、面白さを感じることができる。