【感想】神の国と悪魔の国(パートⅡ.旧約時代4章 カインとアベル)

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 今回のメッセージはここで聞けます(2021年12月14日)→

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これまでの話

 このシリーズでは、「神の国と悪魔の国の葛藤」というテーマを軸に、聖書を読み解く。このテーマは、聖書の歴史哲学の中心である。

 サタンは天使と人間を堕落させ、悪魔の国を造るという目的をある程度達成したかに見えた。しかし、実は神は直ちにサタンを滅ぼすこともできたが、そうはしなかったのだ。サタンを直ちに滅ぼすと、共に堕落した人間をも滅ぼすことになるからだ。

 だから、神は創世記3:15で福音の原型を示し、将来的に人間を救った上でサタンを滅ぼすことを啓示した。

今回のメッセージを要約すると

  • サタンはカインにアベルを殺させて、「女の子孫」誕生を妨害したが、神はアダムとエバからセツを誕生させた。
  • サタン、アベルを殺しても新たな子孫が与えられたことを見て別の方法を考え出し、カインの子孫を増やして高い文明を持たせ、セツの子孫たちに悪影響を与えるようにした。
  • さらに、堕天使と人間の雑婚を進め、人の中にある「神のかたち」を破壊し、「女の子孫」の誕生を妨害しようとした。

感想・気づき

 サタンは、神が啓示した「女の子孫」が自分を滅ぼすことを恐れていた。だから、サタンは「女の子孫」を抹殺する、またはその誕生を妨害することを考える。これは旧約聖書を貫く一つのテーマであり、旧約聖書はサタンによるメシア到来の妨害の記録として読むことができる。

 

 アダムとエバには二人の息子が与えられた。兄のカインは、神に対して反抗的な性質を持ち、弟のアベルは神を慕い求める性質を持っていた。アダムとエバアベルを「女の子孫」と思ったことだろうし、サタンもまたアベルを「女の子孫」と思ったか「女の子孫」を輩出する家系の人物だと考えたのだろう。そこで、サタンは神に反抗的なカインを用いてアベルを抹殺する。「悪魔は初めから人殺し(ヨハネ8:44)」だったからだ。

 カインとアベルは共に罪人であり、人類の堕落後、エデンの園の外で生まれた。同じ両親から生まれ、同じ環境で育った。

 しかし、カインのささげ物は信仰によらないもので、アベルのささげ物は血のささげ物であり、信仰に基づいていた。創世記4:3に「しばらく時が過ぎて」とあり、この間に人口が増加し、ささげ物に関しても神からの啓示があったと考えられる。元々、アダムとエバの罪を覆うために神は「皮の衣を作って彼らに着せられた(創3:21)」が、ここにすでに罪に対する血の犠牲の必要性が暗示されているとも考えられる。

 この時点、つまり、アダムとエバの第2世代の時点で既に、人間の前には2つの道、生き方があったことがわかる。それは神に反抗して歩む「カインの道」と、神に従って歩む「アベルの道」である。また、カインは歴史上初めての殺人を犯したが、同時に初めての嘘もついた。神に対してアベルの居所を「私は知りません」と答えたのがそれだ。

 こんなに早い段階で、この2つに分かれてしまったのは驚きだ。また、少なからずショックでもある。しかし、アダムとエバもそもそも不信仰のゆえに堕落した訳で、第2世代でも原罪は継承されているのだから、当然言えば当然か。こう考えると旧約聖書も全編通して、現代と同じ信仰に関する問題を読者の前に提示していると言えるし、そこから現代的な適用を考えることもできるということだろう。

 

 アベルは殺されたが、新たにセツが生まれ、そこから「女の子孫」へと連なる家系が始まる。これを見たサタンはただ殺すだけではいけないと考え、カインの子孫を増やし、高い文明を持たせ、セツの家系の子孫に悪影響を与えようとする。レメクはその象徴のような人物で、神に敵対する文明の化身のような人物だ。一夫多妻制を初めて採用し、非常に暴力的だった。レメクの子どもたちは様々な産業の祖となり、非常に高い文明を築いた。

 

 同時に、サタンは堕天使と人間の女の雑婚を進め、人間の中にある「神のかたち」を破壊し、そもそも「女の子孫」が生まれてこないようしようとした。

 これは「さて、人が大地の表に増え始め、娘たちがが彼らに生まれたとき、神の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、それぞれ自分が選んだ者を妻とした(創6:1〜2)」という、日本語訳で読むと非常に奇妙に感じられる箇所に意味である。「神の子ら」とはヘブル語で「ベネイ・ハ・エロヒム」という言葉で、ヘブル語聖書では一貫して天使を指す。これは良い天使も堕天使も両方指す。この箇所が堕天使と人間の女との雑婚であるという解釈は、伝統的なユダヤ人の解釈であり、ユダヤ人の歴史家ヨセフスの「ユダヤ古代史」においても同様の解釈をしている。

 この雑婚の結果、異常な人間が誕生し、聖書では「ネフィリム」と呼ばれている。このネフィリムたちの記憶がギリシア神話に歪められた形で記録されているという説もある。

 この箇所は一体何の話をしているのか全くわからず、長年疑問に思っていたが、この解釈でスッキリとした。また、ギリシア神話との関連も、これは証明したりできる類のものではない気がするものの、非常に面白いし、説得力はあるなと思う。