【感想】創世記(13)—ノアに対する命令—

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 今回のメッセージはここで聞けます(2008年9月8日)→

©️ハーベスト・タイム・ミニストリーズ
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 このメッセージのアウトラインはこちら

 今回は創世記6:9~22までです。

ここまでの文脈

 創世記には11の区分(トルドット)がある。前回までで第2のトルドットが終わった。今回からは第3のトルドット(創世記6:9~9:29)が始まる。

 前回は、「洪水が起こる理由」を見たが、今回は、「ノアに対する命令」を学ぶ。

 また、このトルドットは、対照対句法というヘブライ文学の文学形式に則って書かれている。

今回の聖書箇所を要約すると

  • ノアは、「正しい人」で、アダム以来の10世代で最も「全き人」だった。
  • 神は、地上に悪が満ちるのを見て、人類を滅ぼすことを決めた。
  • ノアは、神の命令に従って、箱舟を作る。

感想・気づき

 対照対句法という文学形式は、ヘブライ文学特有の対句法のバリエーションの一つで、対になる句に、同じ意味ではなく、反対の意味の句を持ってくる方法だ。日本語の詩の形式は五・七・七などの音節の数が重要になるし、英語だったら「韻を踏む」というように音の種類を合わせるようにする。ヘブライ語の場合は、対句を作ることで詩としての要件を備える。このトルドットの対句の構造は、メッセージのアウトラインに詳しく書かれている。

 モーセはトルドットを意識して、創世記全体を編集しているし、一つ一つのトルドットについても、相当細やかに文章を綴っていることがこういったことからわかる。こういう詩文になっている箇所は、原語で読んで味わってみたいなぁと強く思う。

 

 ノアは「正しい人」で「全き人」だった。ここで「正しい人」とは、ヘブライ語で「ツァデク」といい、義認や内面の義、救われた状態を意味する。「全き人」は、「タミム」というヘブライ語で、無垢な人を意味し、外面的状態を指す。この「タミム」という語は、レビ記で、犠牲の動物に関して「傷のない」と訳されている言葉と同じ言葉である。ノアは、義認を受けており、かつ、アダム以来の10世代で最も「タミム」な人、「傷のない、無垢な状態」の人という訳だ。

 ここで、ノアは、前回のメッセージでも学んだ通り、「信仰による恵み」を神から得ていたので、「正しい人」「全き人」となった。つまり、神のことばに信頼して従った結果ということだ。このことは、エノクと同じように、ノアが「神とともに歩んだ(創世記6:9)」と表現されていることからもわかる。

 きっちりと読むと、創世記に既に、救いは信仰によることがはっきりと見て取れる。今も昔も信仰義認しかない。福音の内容(=信じる内容)は時代によって異なるが、行いではなく、信仰によって義とされるという救いの構造は聖書の中で一貫していることがよくわかる。

 

 「箱舟」は、ヘブライ語では「テイバー」という。これはエジプトの言葉に由来するもので、「箱」を意味する。出エジプト2:3~6で、モーセが入れられていた「かご」と同じ語である。また、箱舟の内と外を塗った「木のやに」は、「カファー」というヘブライ語で、「被い」、「贖い」を意味する。ユダヤ人が被る「キッパ」と同じ語源である。

 溺死から守られたノアは、人類に救いをもたらし、モーセは、イスラエルに解放をもたらした。「木のやに」で被われた箱舟は浸水から守られたし、イエスの血潮により罪を贖われた者は罪から守られる。また、海は、創世記1:2では「大いなる水」、「テホム」として呪われた状態を表していたことを考えると、箱舟は象徴的には罪から守られたとも解釈できそうだ。

 この辺りは、ヘブライ語原語のワードスタディなくしては、味わえない聖書の深みだと思う。自分でもヘブライ語を学びたいし、やはり、ユダヤ人(特にメシアニック・ジュー)から直接教えて欲しいと思ってしまう。

 

 また、箱舟のサイズは、長さ135m、幅22.5m、高さ13.5mで、3階建て。床面積は3,037.5㎡、920坪、総床面積2,760坪というとんでもない大きさだった。これは確かに周囲の人は、ノアは頭がおかしくなったと思ったことだろう。そして、神は120年忍耐したが、箱舟の建造にも相当の年数がかかったことだろうと思う。