【感想】ルカの福音書(1)献呈の辞 ルカ1:1~4

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 今回のメッセージはここで聞けます(2021年10月17日)→

©️ハーベスト・タイム・ミニストリーズ
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今回の聖書箇所を要約すると

  • ルカの福音書の執筆者は、医者で歴史家のルカで、ギリシア人や知識人に向けて書かれている。
  • 既存の文書資料、口伝情報、インタビューによる新情報に基づいて執筆された。
  • 宛先のテオピロは、ローマの高官で信者である可能性が高い。

感想・気づき

 新約聖書の4福音書の違いが簡潔に解説されていた。なぜ福音書が4種類もあるのか疑問に持つ人も多いので、これからは今回のメッセージの内容を基にして話そう。

 マタイの福音書は、ユダヤ人向けの福音書で、メシアを「ユダヤ人の王」として描いている。旧約聖書の知識を前提としているので、異邦人には理解が非常に難しい。

 マルコの福音書は、前書きなしですぐにイエスの公生涯を書いている。これは、ローマ人向けに書かれており、メシアを「主のしもべ」として描いている。ローマ人は知識よりも、力や行動力を重視したので、この福音書ではイエスの教えよりも、その行動に重点が置かれている。

 ルカの福音書は、ギリシア人や知識人向けに書かれており、メシアをギリシア的な意味で「理想的な人(知的、肉体的に)」として描いている。献呈の辞から始まっているのは、古典ギリシア文学の形式に則って書かれているから。

 最後のヨハネ福音書は、教会全体の信者のための福音書で、メシアを「神の子」として描いている。行動よりも教えに重点があり、共観福音書(マタイ、マルコ、ルカ)が書き洩らしたことを記録している。

 以上のことから、まだ信者でない人に対しては、マルコの福音書かルカの福音書がお勧めで、旧約聖書を学んだ人にはマタイの福音書、信仰歴が長い人にはヨハネ福音書がお勧めである。

 

 ルカの福音書の執筆者ルカは、異邦人であるという説と、ユダヤ人だという説がある。通説で異邦人とされており、コロサイ4:14でルカが他の異邦人と共に列挙されているというのが根拠である。しかし、ユダヤ人の習慣を熟知している点や、エルサレムに対する愛着の深さ、また、聖書を書く使命はユダヤ人に与えられていると考えられる点などから、このメッセージではユダヤ人説を採用している。

 

 ルカは、パウロと同じく、公生涯の間にイエスとは会ったことはない。だから、「初めからの目撃者で、みことばに仕える者となった人々(ルカ1:1)」、つまり使徒たちからの口伝情報や、「多くの人が記事にまとめ(ルカ1:1)」た文書資料に加え、ルカが新たに関係者にインタビューして聞き出したことをもとに福音書を書いている。

 ルカの執筆時点で、マタイの福音書とマルコの福音書とは既に完成しており、それ以外にも様々な文書資料があったとされている。口伝情報も含め、資料内容を「綿密に調べて(ルカ1:1)」精査して執筆したものと思われる。

 また、バプテスマのヨハネの誕生物語とイエスの誕生物語とは、ルカの福音書にしかない情報なので、これらはルカのインタビューによる新情報と考えられる。

 このように、ルカが具体的にどのように調査したのかを考えるのは面白い。歴史家であり、ジャーナリストとも言えるルカの執筆した福音書に対する信頼性が高まる作業だと思う。

 

 今回の聖書箇所は、「献呈の辞」といわれるもので、古典ギリシア文学の形式に則っている。この前書きの目的は、著者の資格、調査内容、その作品の信頼性を伝えることを目的としており、上述のとおりその目的を果たしている。そして、この文学形式を採用することで、ギリシア人や異邦人の知識人を意識して書かれていることがわかる。

 「古典ギリシア文学」というものを何も読んだことがないので、これを機会に何か読んでみなければと思わされた。