【感想】30日でわかる聖書 マタイの福音書(2)メシア預言の成就

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 今回はマタイの福音書第2章までです。

ここまでの文脈

 マタイの福音書第1章冒頭には、アブラハムから始まり、ソロモン、エコニヤの系譜からヨセフが出ていることが系図で記された。この系図は、先祖にソロモン、エコニヤを持つものはメシアの資格がないため、ヨセフとマリアの夫婦からメシアが生まれるには、マリアによる処女懐胎が必要であったことを示している。そして、系図の直後に処女懐胎の物語が記録されていた。

 この福音書は極めてへブル的であり、ユダヤ人向けに書かれた福音書である。

今回の聖書箇所を要約すると

感想・気づき

 マタイの福音書第2章では、クリスマスに関する絵画や絵本などによく描かれる、俗に「東方の三博士」と呼ばれる人たちが登場する。しかし、実際には博士が「3人」とは聖書のどこにも書いていないし、羊飼いがイエスを拝んでからおよそ2年後に彼らはベツレヘムを訪れている。

 当時、「東方」と言えばバビロンのことを指していたが、そこからエルサレムまで来るとなると、数百人単位のキャラバン隊を編成して旅をしたはずである。そうでなければ、道中の安全が確保できないからだ。そして、それだけの大人数だったので、ヘロデ王だけでなく、エルサレム中の人々も驚いたのだ。

 また、イエスの誕生から2年経過していたという根拠は、博士たちがイエスの誕生を知らせる「星」を見てから旅を始めたことと、ヘロデが後にベツレヘム近辺の「2歳以下」の男子を虐殺したという二点である。

 「博士」というのは、当時の天文学者占星術師を指していた。科学と呪術が未分化だったので両方を兼ねていた。バビロンの博士たちが、なぜメシアであるイエスの誕生を知ることができたかというと、彼らはダニエルの預言を持っていたからだ。ダニエルは捕囚でバビロンに連れていかれ、その地で知者として非常に尊敬されていた。そして、アラム語でメシアの来臨時期に関する預言をダニエル書に残しているが、バビロンの博士たちはこの預言を大切に守ってきたので、おおよそのメシア誕生の時期を把握していた。さらに、バラムというバビロンの占星術師が「ヤコブから一つの星が上り、イスラエルから一本の杖が起こり、(民数記24:17)」とメシアの誕生を預言している。このことも彼らは知っていたので、マタイ2:2のような発言をしているのだ。

 こういうディテールを知ると聖書のリアリティーが増す。読んでいて非常に楽しくなる。エキゾチックな感じの「東方の博士」が突然登場しているのではなく、歴史的に旧約聖書とのつながりや根拠があるのだ。このエピソードも実際の出来事を記録しているのであろうが、旧約聖書の背景が非常に興味深い。

 

 4種類あるラビの引用法のなかでは、2つ目に出てくる「歴史的出来事を取り上げ、それを『型(タイプ)』として説明する」という方法が興味深かった。

 「型(タイプ)」とは「原型から複製されたもの」のことで、例えばタイプライターで言うと、紙に打ち出された文字が「型(タイプ)」で、タイプライター側の金属部品は「原型(アンティタイプ)」にあたる。日本語では、「型」と「原型」とがごっちゃになって使われているが、ここでは以上のような意味にわけて考える。

 マタイ2:15で「これは、主が預言者を通して『わたしはエジプトから、私の子を呼び出した』と言われたことが成就するためであった」とある。引用されているのは、神の子であるイスラエルの民がモーセに導かれたエジプトから救出された「出エジプト」のことだ。

 ここで、「原型(アンティタイプ)」は、メシアに起きた出来事であり、出エジプトはその「型(タイプ)」である。「エジプト」は神に反抗する力や勢力のことを象徴する言葉であるので、ここではヘロデの脅威のことを指すことになる。だから、神がイエスをヘロデの脅威から救い出したことが「原型(アンティタイプ)」で、「出エジプト」が「型(タイプ)」ということになる。

 時系列で言うと「出エジプト」の出来事の方が先行しているので、こちらが「原型」になりそうなものだが、神は時空を超えた多次元の存在なので、時間の前後というのはあまり意味がないのだろう。まず、イエスの誕生や十字架の出来事が先に決まっており、それに対する「型」としての歴史的出来事が起こっているということになる。これはなかなか面白い考え方だと思う。