【感想】創世記(27)—イシュマエルの誕生—

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 今回のメッセージはここで聞けます(2008年12月29日)→

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 今回は創世記16:1~16までです。

ここまでの文脈

 神はアブラムを選び、彼とその子孫を通じて全人類を救おうとされた。そして、神は、カナンの地に移り住んだアブラムと契約を締結された。その契約は、「アブラハム契約」呼ばれ、債務は神のみにある無条件契約(片務契約)であった。そして、この契約の中で、アブラムには星の数ほどの子孫が与えられると約束された。

今回の聖書箇所を要約すると

  • アブラムの妻・サライは、自身の女奴隷ハガルによって、アブラムの子を得ようとする。
  • ハガルは妊娠するが、主人のサライを見下すようになったので、サライはハガルを追放した。
  • ハガルは荒野で「主の使い」と会い、アブラムのもとへと帰り、そこでイシュマエルを産んだ。

感想・気づき

 神はハガルの子・イシュマエルも祝福されているんだなぁ。「あなたの子孫は・・・数えきれないほどになる(創16:10)」と主の使いは言った。「見よ。あなたはみごもっている。男の子を産もうとしている(創16:11)」などは、マリアの受胎告知かと思うような語りかけである。また、イシュマエルは誕生前に神によって名が与えられた最初の子である。他にはイサク、イエスバプテスマのヨハネが誕生前に名を与えられている。そして、イシュマエルの子孫であるアラブ人もまたこの祝福を受けているということだ。

 しかし、同時にアラブ人とユダヤ人(イスラエル人)との対立もまた、ここに預言されている。「彼はすべての兄弟に敵対して住もう(創16:12)」と書かれているが、これは現在のイスラエルアラブ諸国との状態に当てはまる。もっとも、旧約預言から、アラブ諸国イスラエルとは最終的には和睦すると考えられており、イスラエルUAEとのアブラハム合意もなされたことから、状況はすこしずつ変わってきている。

 

 サライは、自身が高齢になり、子を得ることはもうできないと考えたので、アブラムに自身の女奴隷・ハガルを与えたが、これはハムラビ法典やヌジ文書にも規定がある、合法的なことだった。当時は、妻が不妊であれば、夫の家系を絶やさないために、女奴隷を与えて、夫がその妻に子を得るようにする義務があるとされていた。そして、生まれてきた子供は法的には正妻の子となる。サライも当時のこの慣習に従ったということだ。

 また、サライ不妊だったが(cf.創 11:30)、当時の文化では不妊であることは恥と考えられていた。それゆえ、ハガルは妊娠すると、サライを見下すようになる。これに対して、サライはアブラムに怒りをぶつけて、ハガルを追放してしまう。この辺りのサライの心情の変化は、ある意味人間臭く、文学的だとも思える。アブラムも怒った妻の言われるがままというのも面白い。ハガルもまた、サライを見下していた状態から改心するが、サライもハガルもその時代の常識に支配されていたのだなと思う。

 

 ここで、元々神はアブラムに子どもが生まれることを約束していたが、それはサライから子どもが生まれることを想定していた。しかし、サライは人間的な努力や考えによってアブラムにハガルを与え、アブラムもサライの言うこと聞いた。これは創世記3:17でアダムがエバに言われるがまま知恵の実を食べたのに似ている。アダムはエバの近くで、蛇がエバを誘惑するのを見ていたにも関わらず、それをそれを止めなかったし、エバの言っていることは間違いだとわかっていたにも関わらず、自らも知恵の実を食べてしまった。これは、現代の夫婦関係を考える場合に非常に示唆に富んでいる。

 

 追放されたハガルは、荒野で「主の使い」と出会うが、これは第2位格の神であり、受肉前のメシアである。旧約聖書で、「主の使い」が48回、「神の使い」が11回登場するが、いずれも常の第2位格の神を指している。「あなたの子孫は、わたしが大いにふやす(創16:10)」とハガルに語っている箇所でも、一人称でこのことを約束していることから、この「主の使い」が神であることは明らかである。